久々の投稿です。あい坊です。
「生きる」を観ました。またまたNHKBS2です。
黒澤明監督作品です。
1952年、昭和27年。東宝。
監督 黒澤明
製作 本木莊二郎
脚本 黒澤明 橋本忍 小国英雄
出演者 志村喬 金子信雄 関京子 小田切みき 伊藤雄之助 藤原釜足 千秋実
音楽 早坂文雄
撮影 中井朝一
1952年ですから、今から56年前の作品です。戦後の復興が順調に進みはじめ、少し余裕を持ち始めた日本が描かれています。
平凡な、全く平凡な市民課長、志村喬が主人公です。
今まで、真剣に生きることをしてこなかった渡辺課長は、胃ガンを宣告され、どうしていいかわからなくなります。自責の念、家族への思い。からまわりする思い。
小田切みき扮する市民課の臨時職員の若さにあこがれ、まるでストーカーのように、若さを命を追い求めます。決して肉体的にではありません。命の輝きを若さに求めるのです。
伊藤雄之助扮する、怪しい小説家がまたいいのです。一度も無断外泊などすることがなかった渡辺課長は、小説家と出会い、放蕩のかぎりを尽くします。グランドキャバレー、ジャズスポット、ダンシングホール、バー、キャバレー。酒と女に金を使いまくります。
その描写の見事なこと。エネルギッシュなのです。淫靡なのです。
でも、気がついたんです。
今と何も変わっていないことを。ダンスホールで踊る人の群れは、クラブに集うのと何ら変わりません。
キャバレーで行われていることも、なんらかわらないのです。
でも、生き生きとしているのです。
余命半年と宣告され、自らの生き方を見つめ直し、何かをしなければならない。でも、何をしていいかわからない。
小田切とよに詰め寄ります。「私はただ、わからない。・・・何をしていいのか。」
喫茶店で、二人のショット。その後ろでは、なにやらパーティーの準備しています。プレゼントを持ち寄る若い人たち。お店の用意したケーキに歓声をあげる、女の子たち。そのシーンをバックに、渡辺課長は、自らを問いつめ、小田切とよに詰め寄ります。
と、その瞬間、どんよりと曇り続けていた、渡辺課長の目が光ります。
「そうだ、こうしちゃおれん!」
小田切とよからもらった、おもちゃのあひるを手に持ち、取り憑かれたように、席を立ちます。
パーティの主人公が、お店に着いたようです。
パーティ会場では、コーラスが始まります。
そのコーラスをバックに、会談を降りる、渡辺課長。
上ってくるパーティの主人公。
「ハッピーバースディ、トゥ、ユー」
映画史に残る名場面ですね・・・・見事です。何度観ても見事です。
渡辺課長が、生きる覚悟を決めた瞬間でした。
死を明らかに意識したとき、人は、生きる覚悟が、肝に落ちるのでしょう。
テレビ版「生きる」も、余命宣告をうけた40代後半を主人公にした同じテーマの映画「象の背中」も、やはりこの黒沢版「生きる」なしには、何も語ることができないのです。
あい坊は、学生時代に映画館で観ています。リバイバルロードショーでした。観ておいて、つくづくよかったと思います。映画は映画館で観る物。そして、フィルム映画は、フィルムを回して観る物だと、痛感します。
でも、本当にいい映画は、どんな形で観たとしても、観る物に大きな感動を与えることも事実でしょう。
黒澤明監督、没後10年。
心から敬愛してやみません。
あい坊でした。
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